双方のポテンシャルを最大限に生かす 日本での存在を強固なものにするFC展開

AB アコモ㈱は、グローバルにネットワークを持つトラベルカンパニーのフライトセンタートラベルグループ(以下、 FCTG)の傘下であるグロバルホテルブランド、クロスホテルズ&リゾーツ(以下、CHR) とマスターフランチャイズ 契約を締結し、2021 年 7 月に「アウェイ沖縄古宇利島リゾート」を開業した。コロナ禍で世界的にホテル業界の景 況感が下落する中、両社がパートナーシップを結んだ経緯および今後の戦略について AB アコモ㈱常務取締役の阿 部吉文氏とクロス ホテルズ & リゾーツ代表取締役社長のハリー・タリワー氏に聞いた。

❑ 2021 年 7 月に開業した「アウェイ沖 縄古宇利島リゾート」を機に、クロス ホ テルズ &リゾーツのブランド展開を MC で行なっています。その経緯を交えなが ら、双方の展望をお聞かせください。


阿部  まず弊社はホテルオペレーターと して 2013 年 5 月設立しました。ビジネス スキームは施設を所有するのではなく、 投資家のアセットをMC(マネージメント コントラクト)契約にて運営受託していま す。2011 年の東日本大震災の復興需 要で開業した「アコモイン気仙沼」から スタートし、トリフィート、グリッズ、ラ・ジェ ントなど、主にビジネスホテルカテゴリー の運営を行なっています。19 年にはアジ ア太平洋地区を拠点とするクロス ホテル ズ &リゾーツとフランチャイズ契約を締結


し、リゾートホテルの「アウェイ沖縄古 宇利島リゾート」を21 年に開業しました。 弊社が運営するアセット数は既存 22 施 設、開発中を含めると32 施設となります。 


ハリー  クロスホテルズ&リゾーツはフラ イトセンタートラベルグループ(FCTG)の 子会社であり、本社はオーストラリアの ブリスベンで上場しています。CHR はタ イ・バンコクに本社を構え、アジア太平 洋地区でホテルを展開するグローバル なホテルマネジメント会社です。CHR は “Luxury by Design” &“Lifestyle” は主なコンセプトとして、展開する五つの カテゴリーはアップスケール以上となりま す。5ツ星クラスの「Cross」、トレンディー そしてアクティブな「Cross Vibe」、体 験型「Away」、明るい滞在の「Lumen(コンバージョン用のブランドとして誕生し た)、個性的なホテルを厳選した「CROSS COLLECTION」の 5 ブランドです。ビ ジネスモデルは、運営を一手に請け負う マネージメントコントラクト(MC)、運営ノ ウハウを提供するフランチャイズ(FC)、 海外からの集客支援を中心とするマーケ ティングパートナーシップ、コンドミニアムと ホテルのタイムシェアのコンドテルアグリー メントです。日本では主に MCとFC を 展開していく考えです。MC は弊社の全 ブランドが対象、FC は Cross ブランド以 外展開が可能です。 なお 100%出資の親会社は、オースト ラリア証券取引所 ASX に上場するフラ イト・センター・トラベル・グループグルー プ(以下、FCTG)です。同社は世界 最大級の先進的な旅行会社であり、世 界中に広がる多様な販売網をもち、交 通、ツアー、ホテルマネジメントソリューショ ンにおける優れた旅行手配実績を持っ ているグロバールパワーハウスの旅行企 業です。航空および交通インフラ、およ びツアー、ホテルなど旅行全般の取り扱 いがあり、全世界で 40 ブランド2000 店 舗以上を展開し、年間利用者数は 2000 万人以上にのぼります。


阿部  開業からの約 9 年間、年間 4 施設のペースでホテルを開業してきまし た。しかし近年、アパホテルが 1000 室 規模のホテルを各地で開業し、東横イン は 30 万室超となるなど規模を拡大して おり、料金やロケーションで厳しい競争 に巻き込まれるようになっています。この 競争に勝つには企業の体力も必要です し、オーナーの利益につながるかも疑問 です。そんな矢先に新型コロナウイルス のパンデミックが起こりました。現在、コ ロナ禍でわれわれが生き残っているのは MC 契約という運営形態が大きいと思い ます。 そうした逆風が吹く中で、アフターコロ ナに向けてわれわれがもっと大きく成長 するために何が必要か考えました。そ れは新しいエネルギーを取り入れること。 そして今回のクロス ホテルズ &リゾー ツとの提携に至りました。今回、マス ターフランチャイズ契約を結んだブランド は「Away Resorts」と「Cross Vibe」となります。


❑ クロス ホテルズ &リゾーツは今回、 日本初進出を果たしましたが、御社との 提携による強みをお聞かせください。


ハリー  クロスホテルズ&リゾーツの強 みは、世界レベルの流通の柱ホスピタリ ティーソリューションを持っています。ホ テル独自の流通とFCTG の連携を集客 や顧客満足に生かすことができるという 点です。FCTG の予約サイトはチャネル による優先順の保証を生かし、ファミリー ファーストという考えのもと、例えば沖縄 のホテルを検索したときにクロス ホテル ズ &リゾーツのブランドが一番上に表示 されます。また、FCTG の他のトラベル ブランドと組んで、ホスピタリティビジネス の運営を充実させるための総合パッケー ジカスタマイズされたコンサルティング・ア プローチにより、ベストな結果を提供でき るように、お客さまのニーズに合わせた サービスを提供しています。五つのブラ ンドを展開することで、ホテル同士の最 小限のカニバリゼーション(共食い)を 防ぐ戦略で、すべてのステークホルダー の win-win 戦略を考えています。アテン ション&ケアと手厚いサポートとアクセスの し易さを提供し、社内の方針として、最 高責任者と直接話せることを重視してい ます。さらに、お客さまのニーズに合わ せて柔軟に対応できるフレキシビリティー も強みと考えています。


新しい価値を提供できるホテルを創出 


❑コロナ禍での開業となりましたが、「ア ウェイ沖縄古宇利島リゾート」の業績お よび今後のプロモーションなども教えてく ださい。


阿部  行動制限などもあって今年 4 月ま では計画に達することはできませんでし たが、7 〜 8 月は好成績を収めています。 7 月は稼働率 77%、ADR3 万 7000 円、 8 月は稼働率 87%、ADR は 4 万 2000 円でした。トップシーズンのお盆期間には 最上階の客室「スタービュー」(天体観 測ができる望遠鏡付きの特別室)を 11 万円で販売することもできました。9 月は オンハンドで 53%、ADR3 万円ほどを見 込んでいます。開業 1 年でこのホテルの ポテンシャルが明確になりました。今後 は知名度を上げながら、近隣のホテルと しっかり競合できるようなコンテンツを展開 していきます。コンテンツとしてテントサウ ナを導入しているのですが、これは大変 好評です。こうしたゲストが一日ゆっくり 過ごしてもらえるようなコンテンツを導入し ていくことで、連泊やレストランの売り上 げの向上を期待します。


また、今回の提携によりグローバルブ ランドの運営にかかわることになりまし た。日本国内の運営ノウハウだけではな く、グローバルチェーンの思考やノウハウ を共有できることは、弊社としても成長に つながると感じています。日本がインバウ ンド需要で沸いていたコロナ前でも、旅 行者数全体の約 30%にしかインバウンド は満たず、さらに 70%以上がアジアから の集客でした。そうしたことを考えても、 FCTGを通じてと欧米からの集客も期待 できることは大きなメリットと感じています。 FCTG はファミリーホテルファーストという 方針に基づき、グループ内のホテルを優 先的に提示してもらえるのが大きな強み です。 アフターコロナでは、欧米の方々は必 ず日本に旅行したいと目を向けてくれると 思います。東京オリンピックは無観客に なってしまいましたが、全世界に東京が 放映されたので安全できれいな日本に来 たいという欲求が生まれたはずです。そ のチャンネルを持つ FCTGとの提携はわ れわれに大きなビジネスチャンスをもたらすと確信しています。


❑ 現状、日本のホテル業界は人材不足 や高い離職率などさまざまな課題があり ます。どのような対策を講じますか。


ハリー  当社では活躍できる人を努めて引 き上げていく文化があり、前出のように、最 高責任者との相談・意見交換がしやすい 環境であるほか、フレキシビリティーに新し いニーズを取り入れています。同時に、職 場環境の改善を常に図り、働きがいを醸成 させていますので離職率は高くありません。


阿部  2018 年前後より、12アセットのホ テルを MC で受けていますがそれに伴 い、台湾、韓国、ベトナムなど海外での リクルーティングを開始しています。現在 600 人の社員のうち約 78 人が外国籍で す。今回、さらに韓国から40 人採用し ました。また技能実習生も活用しており、 ベッドメイキングなどで積極的に採用して います。離職率を解消するためには、 福利厚生の充実や賃金アップが不可欠 です。クロスホテルズ&リゾーツとの提携 を機に、客単価が日本人の 1.5 倍、滞 在期間はアジア人の約 3 倍となる欧米人 の獲得に注力したいと考えています。 これまでは宿泊特化かリゾートのホテ ル展開でしたが、いまではビジネスとレ ジャーを融合した「ブレジャー」という カテゴリーも登場していることから、ハイ ブリットという視点のもと、宿泊特化型に プールやバー、温泉があってもよいので はないか。朝食対応だけのレストラン利 用ではなく、フル活用にも注力していきた いと思います。こうしたコンテンツは稼働 率やADRのアップにもつながることから、 新しいアセットの開発には必要な考えだと 思っています。


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